病院の中は、透明性があり安全という印象があります。しかし、医療現場は、患者さまやご家族には決して見せない部分があります。そのため働いている職員も表情や感情を胸に抱えるためストレスが多いと言われています。一人で悩みがちですが、みなさん同じ思いだということを知っておくと気持ちが楽ですよ。

● 看護師は責任の重い仕事

受け持った患者さんすべてが回復に向かうとは限りません。看護師は、がんやその他の病気で死の期限を告げられた患者さんとも向き合わなくてはなりません。看護師になって初めて「人の死」と向き合う方も多く、終末期の患者さんに対してどのように向き合っていったらよいのかという心の問題は、実際に体験してから学ぶしかありません。死に直面しながら、家族のために精いっぱいのことをしようとする人、死を受け入れて残り時間を大切に過ごそうとする人、迫りくる不安を抑えきれず苦しむ人、様々な患者さんと向き合って、生死について学び、患者さんにどのように寄り添っていくか。大変な課題です。
 
● 「死」は悪い面ばかりではない

以前は、家族に囲まれながら家の中で死を迎えていくそういうことが普通でした。小さな子供ながら、祖父母や曽祖父母のなくなる様子をおぼろげながら覚えているものでした。死に直面した時、悲しみや口惜しさ、いろいろな感情が襲ってきますが、その人への感謝の気持ちや愛情、思いで、そういった暖かいものも強く鮮明に感じる瞬間でもあります。死は必ずしも悪いことばかりではありません。患者さんやその家族と共に、終末期を意味のある貴重な時間にできるよう、看取るための支援もまた、とても大切なことです。とはいえ、初めて患者さんの死に直面した時の衝撃はやはりかなり大きいものになります。一人で抱え込まず、先輩看護師に話し、支えてもらいましょう。つらさを乗り越えた時、命の尊さ、重さ、看護師としての意味、実に様々なことを教えてもらっているはずです。

● 患者の死から学ぶことは宝

ベテラン看護師になると、実に様々な人の死とかかわっていきます。その都度落ち込むことは少なくなってきますが、やはり一人ひとり、尊敬の気持ちと共に思い出として残っているといいます。ある若い青年が、急変が起きて死ぬ前の夜、ベッドから起きるのも大変なのに、「家族に電話をしたい…」と話していたそうです。その時看護師さんはほかの急変の患者もあったため「明日になったら一緒に電話しにいこうね」とその場を去りました。後で考えると、「青年は何か予感があって不安な気持ちを聞き取ってもらいたいそういった気持ちもあって私に話しかけてきたのではないか…。もしあの時、ちょっとの時間でも立ち止まって聞いてあげていれば…。」一瞬の判断の大切さを痛感したといいます。死にゆく方へどのように向き合うことができたか。忙しい時間の中でも、どのぐらいその人のために立ち止まって終末ケアに積極的に取り組むことができたか。看護師にしかできない、あなたにしかできない専門的なケアについて、積極的に学んでいきましょう。